あのハニワの日から早2年──再び日本武道館の地に舞い戻った、レキシ。

 7月1日の福岡サンパレスを皮切りに全国10ヶ所11公演に及んだ〈レキシツアー 遺跡、忘れてませんか?〉の千秋楽は、2度目となる日本武道館で迎えた。危惧された台風の影響も当日未明にはピークを超え、朝を迎えれば見事なまでのレキシ晴れ。容赦なく照りつける真夏の日射しは、九段下から田安門への坂道を登る民たちが小脇に抱えたバッグから覗く稲穂の黄金色を、さらに鮮やかに輝かせていた。

 武道館の中に入ると、正面ステージにはアフロライクな螺髪(らほつ)がファンキーな大仏が鎮座。その周りをぐるりと座席が取り囲んでいるのだが、ステージを後方から眺める位置まで食い込んだステージサイド席は、一番上の列までみっちり埋まっている。アリーナも可能な限り隅々まで座席が設営されていて、誰も文句をつけられないぐらいの約12,000人という超満員御礼状態。こんなに盛況な武道館を見る機会もそうそうない。

 ミュージシャンなら誰でも憧れるであろう、日本武道館という会場でワンマンライブを行えるアーティストは数少ない。しかも2回以上開催できたとなると、ほんの一握りの存在に絞られるだろう。同じ会場で2度目の開催となれば、初回のインパクトをいかに上回ってくるのか、観客のハードルは上がるばかりだ。高まる期待に、レキシは見事に応えることができるのだろうか?

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 客電が落ちホラ貝が鳴り響くと、大仏の目と額の白毫(びゃくごう)が光り、レキシのバンドメンバーが舞台に登場。そのままライヴがはじまるかと思いきや、ステージ上方のスクリーンに映像が流れる。河原をマラソンするレキシ池ちゃん、伴走する元気出せ!遣唐使(渡和久)と百休さん(TOMOHIKO)、そしてワイプの中でZARDの「負けないで」を歌って応援する片桐仁(ラーメンズ)。今回もどこかのテレビ局が地球を救う前に、武道館で「愛は地球をレキシ」してしまった既視感ある映像で会場があたたまったところで、いよいよ御館様がステージに登場!ニュー・アルバム『Vキシ』でもプロローグを飾る「牛シャウト!」で軽快に幕開け。なんと1曲目からピンクの忍者装束に身を包んだシャカッチ(ハナレグミ)がギターを抱えてバンドに参加。池ちゃんはステージ狭しと右へ左へと駆け回り、冒頭からテンションを上げていく。「ありがとう武道館! 台風行っちゃったよー!」と武道館のステージに再び立てた喜びを伝えると、そのまま「大奥〜ラビリンス〜」に突入。ファルセットによる美しいハーモニーを聴かせた池ちゃんとシャカッチ。「二人にちなんだ曲やろうか?」とスーパーバタードッグ時代の人気曲「FUNKYウーロン茶」を織り混ぜたりとサービス精神全開。あらかたやりきった感が出てしまったか「レキシでしたー!」とステージを去ろうとする御館様を引き留めるように伊藤に行くならヒロブミ(伊藤大地)がビートを叩くと、3曲目にして早くも「年貢 for you」を披露。武道館のアリーナ1列目の端っこから一人ずつ俵を手渡しでつないでいく〈俵リレー〉が非常にゆったりとしたペースで行われつつ、「涙のキッス」~「A・RA・SHI」を脈絡もなくぶっ込んでいく。自らのやりたい放題っぷりにちょっと不安になったのか、♪言わないで~言わないで~(このことは誰にも)と、ガラスの十代のようなナイーヴさも垣間見えた。

 すでにフェスの1ステージ分ぐらいはありそうな充実したパフォーマンスを見せたところで、やっと「こんばんはケビン・コスナーです」といつもの自己紹介。超満員の観客にあらためて感謝を伝えて、ライヴを再開。今回のツアーで披露してきた初期曲「Let's 忍者」では、シャカッチの顔弾きが映える渋いブルース・ギターを聴かせると、「エリック・クラプトンみたい」と気づいた池ちゃんがいきなり「Tears In Heaven」を歌わせるガチでその場の思いつきなぶっ込みシーンも。原点回帰を感じさせるツアー・タイトルにちなんだ「古墳へGO!」、ニュー・アルバムに収録されたドライヴィンな新曲「やぶさめの馬」と立て続けに披露し、前半戦を駆け抜けた。

 バンドメンバーが一旦退場すると、ステージにはドラムセットやアンプが新たに運び込まれる。そう、今日のハイライトのひとつと言えようネコカミノカマタリ(キュウソネコカミ)との生コラボがついに実現!池ちゃん曰く「沖縄のヤンキーの成人式」ライクなカラフル羽織袴に身を包んだメンバーが登場するが、どうにも一人足りない。すると往年のヒット曲「イルカに乗った少年」に乗って、城みちるコスに身を包んだヴォーカルのヤマサキ春の藩祭り(ヤマサキセイヤ)が登場!対象年齢50歳以上のネタに、コスプレしてる本人すら意味わかってなさそう感はあったものの、そこからはネコカミノカマタリの独壇場。キュウソの楽曲「ファントムヴァイブレーション」を、♪稲穂はもはや俺の臓器~!と替え歌で披露したり、BUMP OF CHICKEN「天体観測」を歌いはじめようとしたりと、圧の強い自由奔放さを存分に発揮。これには池ちゃんも「レキシに関西足したら時間いくらあっても足らんぞ!こんなの武道館でやることじゃない、リキッドルーム クラスでやること!でも……キライじゃないよ♡」と白旗を揚げるしかなかった。20代の若者たちと40代のおっさんが男子校の軽音部ノリでひとしきりワチャワチャしたところで、いよいよ待望の「KMTR645」を披露! アルバムに収録された音源を聴いた時も、バンドが変わっただけでこんなにも印象が違うものか?と驚かされたが、この日のセッションはさらに迫力を増したサウンドで圧倒。武道館を蒸し暑いライヴハウスへと変貌させていく。これがリキッドルームや新代田FEVERだったらモッシュやダイブが起こってもおかしくない盛り上がりだが、この日の武道館では人間の代わりにビニールでできたイルカがアリーナ中をクラウドサーフしていた。

 「キュッキュッキュー!」の余韻が抜けぬまま、変拍子の濃密ファンク・チューン「寺子屋FUNK」を、レキシ・シャカッチ・元気出せ!遣唐使が男シュープリームスよろしく歌い踊る。ドリカムのライヴにサポート参加した際に着用した衣装(中村正人さんのご好意によって貸し出されたもの)に身を包んだ遣唐使が〈カズ(久)ダンス〉をぎこちなく踊ると、対抗してシャカッチは銀ラメの手袋を右手につけてムーンウォークなどマイケルばりのダンスを披露。最後はなぜか3人でキャイーン・ポーズで〆という、カオスな時間が流れた。

 カオスゾーンはまだまだ続く。「SHIKIBU」でコラボした阿波の踊り子(チャットモンチー)をステージに迎えると「せっかく来てくれたから歌ってもらっていい?」と「シャングリラ」ならぬ「年貢リラ」をキュートに歌って会場を沸かせた。いよいよ「SHIKIBU」をコラボで演奏か、というところで、なんとMVに出演した劇団シキブ(八嶋智人)がサプライズで登場!武道館のステージに立って完全にテンションが上がりまくりの劇団シキブは、予測不能なボケ&アクションを絶え間なくぶっ込んでいく。自由すぎる劇団シキブに翻弄されまくって疲れを見せはじめた御館様だが、「あなたのライヴはいつもこんなんだよ!」と鋭いツッコミを入れられて、オーディエンスから賛同の拍手が起こった。そもそも劇団シキブが武道館にやってきたのは、池ちゃんがMCを務めていた『アフロの変』にゲスト出演した際に「SHIKIBU」の振り付けを考えたのにも関わらず、レキシのファンにも浸透してないので、この場で一緒に踊りたいという願いを叶えるため。大幅に遠回りしたがようやく「SHIKIBU」が演奏されはじめると、劇団シキブが直々に観客に指導した(どことなくコロッケをインスパイアしたような)SHIKIBUダンスを会場全体で踊り、異様な一体感が生まれた。自分のライブのごとくステージを縦横無尽に駆使した劇団シキブ。阿波の踊り子とともに阿波踊りで退場するまで、暴れまくりの十数分であった。

 まるで焼け野原と化したステージに、バンド・サウンドのカッコよさをふたたび見せつけるべく演奏されたのがキラー・チューン「salt & stone」。4度目の登場となるシャカッチを筆頭に、メンバーが次々とソロを回していく。レキシのコミカルな面白さも、このバンド・メンバーたちの素晴らしい演奏力とミュージシャンシップ、そして息のあったグルーヴによって支えられているのだと、あらためて再認識させてくれる圧倒的なプレイだった。

 「salt & stone」で爆発的な盛り上がりを見せて、このままライブが終了してもおかしくないような勢いではあったが、流麗なピアノにのって更なるサプライズゲストとしてステージに登場したのは、まさかの森の石松さん(松たか子)!日本髪を結い色真紅の打掛を装って登場したその姿は、ガチ大奥!最上級の美しさとオーラに、会場にはため息と歓声が入り混じった得も言われぬ熱狂が渦を巻く中、『Vキシ』のラストに収録された「最後の将軍」をステージ上で初デュエット。透明感のある石松さんの歌声が、御館様の歌声と重なりあって美しいハーモニーを聴かせるだけでなく、間奏では連弾まで披露し、見事に武道館の大観衆を魅了した。手応えを感じた池ちゃん「これは歌舞伎界が認めてくれたって考えていいんでしょうか?」と問いかけると、石松さんは「いらっしゃい」と応え、〈貴史とたか子 初めての共同作業〉は大成功を遂げた。

 ラストにもう1曲!の前に、松たか子の代表曲「明日、春が来たら」を「明日、武士が来たら」で歌ってくれませんか?と無謀なお願いをする池ちゃん。そんな無茶ぶりにも快く応えるあたり、さすがの器のデカさ!と、石松さんのことがさらに好きになってしまったのは、きっとこの会場に居あわせた人全員に共通する想いだったはずだ。そしていよいよ本編ラストのナンバーは、なんと「きらきら武士」を森の石松さんと一緒に歌うという予想外のコラボ! ミラーボールが回り金テープが舞う中、夢のように幸せな空気が日本武道館を包み込んだのだった。

 「とんちんかんちん一休さん」のご陽気なサウンドが流れ、アンコールの時間へと突入。雑なカツラに雑な衣装で揃えた一休さん'sが登場し、雑なダンスを踊るという謎のパフォーマンス(なぜか一人だけキル・ビルだったが)。さっきまでの胸いっぱいの感動はどこへ行った!? とツッコミたくもなるC級クオリティではあったが、もちろんこれで終わるレキシではない。『Vキシ』収録の名バラード「一休さんに相談だ」を池ちゃんがじっくりと歌い上げしっかりと挽回。するとステージにはふたたび劇団シキブが登場。「屏風に描かれた虎を退治してくれ」という、一休さんでおなじみのとんちエピソードを寸劇で再現するというパートなのだが、これがまあ池ちゃんと劇団シキブの〈ボケonボケ〉な組み合わせのせいで脱線しまくりで一向に話が進まない。さらにオチに用意されたイリュージョンもまさかの不発に終わり、一体なんの時間だったんだ?という、でっかいクエスチョンマークをオーディエンスの脳内に植え付つつ、だけどなぜか爆笑に次ぐ爆笑に沸く壮大な茶番が繰り広げられた。

 レキシ武道館もついに終盤。会場中が待ちに待った「狩りから稲作へ」。見渡す限りの稲穂の海が波打つ光景は、明らかに今までと量が違う、うねりが違う。途中で♪ねぇどうしてすごくレキシ好きなことただ伝えたいだけなのに、稲穂が出ちゃうんだろう~と「LOVE LOVE LOVE」なフレーズを織り交ぜつつ、久しぶりに〈高床式〉もきっちり導入し(字面だけではまったく意味がわからないが)、いよいよ「キャッーーツ!」と叫ぼうとしたその瞬間、池ちゃんが発したのは「キューーーッ!」というイルカの鳴き声。会場から起こるブーイングを突き放すように、「いつまでもキャッツと思うなよ、もう動物が変わった!」と宣言。そして「キュー」と言えば、池ちゃんが出演したドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』。そこで最後のスペシャル・ゲスト!なんとあの〈いとこ〉の登場か?と期待を持たせつつ(完全にネタバレ気味に)登場したのは〈やつ本潤〉こと、やついいちろう。なんとも微妙な空気が流れる中、言われた通りにやっただけなのにハズレくじを引かされたやついは「だから言ったろ!こんなの武道館でやることじゃないんだよ!さっき準備してたらキュウソのメンバーに『僕らだったらできないですよ』って鼻で笑われた。俺だってできないよ!」とありったけの文句をフィクサーである池ちゃんにぶつける。しかしそんなことは意に関せずといった具合に「これがあるからやめられないんだよねぇ~」とほくそ笑む御館様。武道館という大舞台でこのユルい感覚の笑いを嬉々としてぶっ込み、たとえ少々スベったとしても間合いを見計らったトークでリカバリしていく、そんなレキシのモンスターぶりに戦慄を覚えた瞬間だ。そして、とうとうアンコール最後の曲「KMTR645」を、レキシのバンド・メンバーが熱演。この日登場したすべてのゲストもステージに上がり、「キュッキュッキュー!」の大合唱で大団円。3時間超に及ぶ、大レキシショーは幕を下ろしたのであった。

 レキシにとって2度目の日本武道館ワンマン。ライヴ演出自体はシンプルに削ぎ落とされながらも、その分オーディエンスの予想を大きく上回るサプライズを用意し、さらに音楽的な見せ場をじっくりと作り上げようという意図も窺えた、充実の内容だった。もしも3度目の武道館が実現した時、レキシはどんな進化を遂げているのだろうか? 今から楽しみで仕方ない。

setlist,セットリスト 01.牛シャウト!
02.大奥〜ラビリンス〜
03.年貢 for you
04.Let’s 忍者
05.古墳へGO!
06.やぶさめの馬
07.KMTR645
08.寺子屋FUNK
09.SHIKIBU
10.salt & stone
11.最後の将軍
12.きらきら武士

EN1.一休さんに相談だ
EN2.狩りから稲作へ
EN3.KMTR645
member,バンドメンバー Gt:健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)
Piano&Cho:元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)
Ba:ヒロ出島(山口寛雄)
Dr:伊藤に行くならヒロブミ (伊藤大地)
Sax&Fl:TAKE島流し(武嶋聡)
Tp:元妹子(村上基 from 在日ファンク)
guest,スペシャルゲスト シャカッチ(ハナレグミ)
ネコカミノカマタリ(キュウソネコカミ)
阿波の踊り子(チャットモンチ―)
劇団シキブ(八嶋智人)
森の石松さん(松たか子)
やついいちろう

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