稲穂の日

稲穂の日

稲穂の日

キャッツの日

 レキシ武道館2days。その報せは、今年6月から全国14ヶ所を回ってきた「レキシツアー 2017 不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち」のツアー中盤となる6月27日の京都ロームシアターにて、大阪城西の丸庭園での初の野外ワンマンライヴ開催と合わせて(まるで言い忘れてたことを思い出したかのように)実にあっさりと発表されたのだ──筆者はちょうどこの日のライヴを目撃していたのだが、あまりにもさらっとすごいことを発表していたのでその時は思わず笑い飛ばしてしまったが、よくよく考えれば、レキシにとって武道館ワンマンは通算3回目、そのうえ今回は2年連続の開催、しかも2日間って!正直なところ一抹の不安が頭をよぎったりもしたが、蓋を開けてみれば2日間ともチケットは発売早々に売り切れ、変わらぬ人気の高さを見せつけた。
 「レキシツアー 2017 不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち」は7月27日の千葉・市川公演でプチファイナルを迎えたが、今回の武道館2daysはツアーの一環として行われるもの。それぞれを〈稲穂の日〉と〈キャッツの日〉と題して、2日とも異なる内容で展開すると前もって公表されていた。  いよいよ1日目〈稲穂の日〉。10月半ばだというのに晩夏のような日差しと暑さとなったこの日、ほぼ定刻通りにライヴはスタート。暗転した場内に、このツアーで毎回上映されていた映像が流れる。レキシが若君、足軽先生(いとうせいこう)が父上、仏像っち(みうらじゅん)が母上に扮し、今まさに若君に家督を譲ろうという設定だ。家督を譲った証として、レキシ家に代々伝わるオルゴールが手渡される。元服するまで蓋を開けてはならぬと禁じられていたが、若君が我慢できずにオルゴールの蓋を開けると不思議の国へと迷い込んでしまう……というストーリーだ。ステージ上に鎮座する大きな玉手箱のようなオルゴールの蓋が開くと、眩しい光とともにレキシが登場。1曲目「KATOKU」の演奏がはじまると、客席中がコブシを挙げて盛り上がる。♪世襲制~というフレーズで毎回池ちゃんが勢いよく振り返るのだが、ただ振り返っただけでこれほど笑いを誘うミュージシャンも他にいないだろう。そして曲の最後で振り返ると、若君のヅラが綺麗に飛んでいくのも、ツアーで毎回見せていた演出。その上手な飛ばしっぷりは武道館の大舞台でも見事にキメていた。
 2曲目「大奥~ラビリンス~」でミラーボールが回り武道館がダンスホールに変わると、曲の合間には先だって対バンしたばかりのPerfumeの「ポリリズム」をダンスとともに織り交ぜてみたりと、序盤からサービス満点の御館様。続く「KMTR645」では、アリーナに(いつもより多めに)イルカが舞い踊り武道館中が大いに沸き上がる中、気がつくと途中で「タッチ」に曲が変わっているという不思議な現象が起こる。この〈いつの間にか曲が変わっちゃう〉という現象こそが、タイトルにある〈不思議の国〉ならでは魔力なのだ。ツアー中で繰り返されたその〈設定〉は、今回の武道館公演でも踏襲されていた。
 ここでようやく「こんにちは、ケビン・コスナーです。いや最近フェスとかではウケないから。こんにちは、ジャスティン・ビーバーです」とおなじみの挨拶(&フェス仕様の挨拶)が出たところで、このツアーでの見せ場のひとつになっていたメドレーのコーナーへ突入。「レキシのライヴは曲が少ないとdisられるので画期的な方法を見つけた!」と、前置きして演奏された「妹子なぅ」「真田記念日」「RUN 飛脚 RUN」3曲のメドレー『飛脚記念日なぅ』では、ただ順番に曲をつなげただけでなく、目まぐるしく曲が入れ替わるアレンジで聴かせたが、ここでもやっぱり(曲数を稼ぐという理由で)他のアーティストの曲もたくさん織り込んでしまう。さらには「きらきら武士」や「狩りから稲作へ」までも、サッサとやっちゃおうとするので場内からはブーイングが起こる始末。そんなこんなで普通に3曲演奏するよりも余計に時間が長くなるという本末転倒ぶりもまた「不思議の国のなせる業」なのだろうか。
 十二単をまとって「SHIKIBU」を演奏したところで、メンバーは一度舞台の外へ。今回の武道館公演はツアーの一環にあるということで、あらかじめゲストは出てこないものと思っていたが、なんと中盤にサプライズゲストとしてニセレキシことU-zhaanが(Amazonで購入したという)ダンボールで出来た兜と甲冑を無理やり着させられた格好で登場。U-zhaanの登場に会場中から割れんばかりの拍手が起こったのは、2014年発表のアルバム『レシキ』のリリース以来、一度も演奏されたことがない「Takeda'」が初めて正式にライヴで披露されるから。「意外とドキドキしてる」「この曲ちゃんとできるわけがない。だって一回も成功してないんだから」「CDに収録されてるのも成功はしてないし」と二人とも不安を露わにしながらも、意を決して「Takeda'」に挑戦……するも出だしのカウントが取れずに上手く入れないというギャグを執拗に繰り返す御館様。そんな自由奔放なちょっかい出しに邪魔されながらも、素晴らしいタブラ演奏を披露していくU-zhaan。CDの再現とはいかなかったが(そもそも再現すること自体不可能)、レキシとニセレキシの息のあったタッグで初めての生「Takeda'」は無事成功、客席からは大きな歓声が送られた。そしてU-zhaanがそのまま残り、バンド・メンバーとともにファンク・チューン「salt & stone」をセッション。ドラムの蹴鞠Chang(玉田豊夢)とU-zhaanのタブラによる白熱した打楽器バトルで大いに沸かせた。
 ニセレキシの余韻が醒めやらぬ中、名バラード「最後の将軍」を感動的に歌い上げたかと思えば、恒例・元気出せ!遣唐使(渡和久)と池ちゃんのイチャイチャTIMEでは、ツアーでずっと繰り返してきた「キャッチミー岡っ引きさん」に入る前のコントのような漫才のようなやりとりの完成度が極まっていて、その安定感たるや熟練した漫才コンビのよう。そのネタ(あえてネタと書いてしまおう)も、この武道館で演じ納めということで二人がちょっと寂しそうにしてるのにも笑えた。
 胸を打つバラード「アケチノキモチ」をじっくり聴かせた後は、「憲法セブンティーン」でバンド・メンバーたちが凄まじい演奏力でソロ回しを披露。途中で蹴鞠Chang(玉田豊夢)のドラムソロが長すぎると池ちゃんがスティックを奪って制止する。しかしそれを振り切ってなお、手でドラムを叩いてソロを続ける蹴鞠Chang(玉田豊夢)を抱きしめ「ごめん、俺が悪かった。ビンタしないから、怖くない」と、レキシならではのやり方で「和睦」を図る一幕も。
 ライヴも終盤。「年貢 for you」では、途中でリクエストコーナーと称してチェッカーズ「涙のリクエスト」を挟み込むと、サックスのTAKE島流し(武嶋聡)が華やかなソロを武道館に響かせた。最後はミラーボールが煌めき金銀テープが舞い散る中「きらきら武士」で賑やかに締めくくり、本編は終了した。

 アンコールが起こる中、ふたたび場内に映像が流れはじめる。流れ出した映像には、稲穂の妖精に扮した岡井千聖とキャッツの妖精に扮したやついいちろうが登場。「狩りから稲作へ」での稲穂コールとキャッツコールを、池ちゃんが最近飽きてきたと釘を刺す。稲穂の妖精が池ちゃんに、これからも稲穂コールは続けると誓わせると、レキシを不思議の国から元の場所へ連れ戻すための魔法をかける……するとエレクトリカルなパレード曲にのって、稲穂の妖精に姿を変えられたレキシとメンバーが登場。ティンカーベルのような衣装に身を包んだ中年ミュージシャンたちのなりふり構わぬパフォーマンスで、拍手と笑いの渦が起こる。
 そしていよいよ武道館が稲穂で埋め尽くされると、ラストの「狩りから稲作へ」に突入。すると歌の途中で池ちゃんが「正直キャッツは飽きております」心情を吐露すると、多数決で今後も続けるかどうかを決めることに。「キャッツを辞めてもいいという人は手を挙げて」と問いかけると、観客はもちろん全員挙手をしないのだが、池ちゃんが振り返るとバンド・メンバーが全員が腕を挙げていた!「まさかお前たちが……」とショックを受ける御館様だったが、メンバーたちの手をよく見ると猫の手の形になっている。すなわち、これからもキャッツを続けたいという意思表明だったのだ!これには御館様も感激し、メンバーたちとステージ真ん中で肩を組んでぐるぐる踊りまわっては、身体中で喜びを表現していた。そこに!地鳴りのように大きな足音が響き渡り、何かが近づいてくる……なんと池ちゃんにそっくりすぎる〈大稲穂様〉がステージに乱入してきたのだった!一緒に登場したキャッツの妖精ことやついいちろうが狂言回し的にその場を仕切って進行していくのだが、あらかじめ用意された台本が雑すぎるということでいろいろ空回りする場面も。しかし、それにもめげず大稲穂様とともに、高床式からのキャッツを見事に成し遂げ、ラストは「稲穂の日が好き~」と池ちゃんが歌い上げて、レキシ武道館1日目〈稲穂の日〉は幕を下ろした。

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setlist,セットリスト M1. KATOKU
M2. 大奥〜ラビリンス〜
M3. KMTR645
M4. 妹子なぅ〜真田記念日〜RUN 飛脚 RUN
M5. SHIKIBU
M6. Takeda'
M7. salt & stone
M8. 最後の将軍
M9. キャッチミー岡っ引きさん
M10. アケチノキモチ
M11. 憲法セブンティーン
M12. 年貢 for you
M13. きらきら武士

EN. 狩りから稲作へ
member,バンドメンバー Gt:健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)
Piano&Cho:元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)
Ba:御恩と奉公と正人(鈴木正人 from LITTLE CREATURES)
Dr:蹴鞠Chang (玉田豊夢)
Sax & Flute: TAKE島流し (武嶋 聡)
Trumpet: 元妹子 (村上 基 from 在日ファンク)
guest,スペシャルゲスト ニセレキシ(U-zhaan)
やついいちろう

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