築城430年以上の歴史を持つ、大阪城。豊臣秀吉が築き、大坂の陣によって落城したのちに徳川氏によって修築され──といった大河ドラマな変遷はさておき、堂々たる御姿で大阪の街の歴史を見守ってきた大阪城は、今なお強烈な存在感とパワーを放ち続けている。
 レキシ・池田貴史にとって、城でライヴを行うことは活動初期からの悲願であった。その願いが、日本を代表する城のひとつである大阪城で叶うことになった。そこには日本武道館単独公演を大成功に収めたり、さらには遺跡でのライヴも実現させてきたりと実績積み重ねてきたことも後押ししただろう。さらに今年2月には、レキシが大阪府にある百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録応援大使に任命されたことで機運も高まった。まさに「歴史の必然」といえよう絶好のタイミングにて実現の運びと相成った。
 「お城でライブができる喜びを皆で分かちあおう~あれ?大阪、いつの陣?~」というタイトルがつけられた今回のライヴ。ツアー中でありながら大阪のみこのシチュエーション、このタイトル。ツアーとはガラリと変わった特別な内容になるんじゃないか?と、期待も大いに高まる。会場となった大阪城西の丸庭園には老若男女1万3000人が集まり、この日のために考案されたレキシならではのフードメニューを食べては談笑したり、場内に設けられたキッズスペースではお城ドームや投げ縄などで親子が遊んだり、もちろん広大な大阪城内を散策したりと、ピクニック気分で楽しんでいるうちにいつしか開演時間に。
 ステージ脇に設置されたスクリーンには、今回のツアーで上映されていたオープニング映像が流れ……と思いきや、突然画面に砂の嵐が起こり、若君に扮した池ちゃんと爺やに扮した中島ヒロト(FM802 DJ)が登場。間もなく開演だからと爺やが若君を会場に連れて行こうとするのだが、道頓堀~通天閣~太陽の塔と、大阪の名所へ寄り道してしまいなかなか大阪城にたどり着かない。最後はなんばグランド花月から若君を駕籠に押し込んだところで映像が終わると、スクリーンから飛び出したレキシと書かれた幟と共に駕籠がステージに到着。扉が開いて「はーい、来たよー!大阪!」という元気な第一声とともにレキシが登場し、いよいよスペシャルなライヴの幕が上がる。記念すべき1曲目はもちろん、大阪城に関わりの深い「真田記念日」。ファースト・アルバムに収録され、ずっと歌い続けていたこの曲に「ハートスランプ二人ぼっち」などを織り交ぜながら快調に飛ばしていく。「KATOKU」で(ダサく)拳を高く掲げて一体感が生まれたかと思えば、「KMTR645」では西の丸庭園に過去最高頭数のイルカ(ビニール製)が舞い踊る。そのシュールな光景に、池ちゃんも思わず「何の光景よ!こりゃライヴじゃねぇよ、新しいテーマパークだわ!」と半ば呆れつつも、客席の異様な盛り上がりっぷりに感謝の表情を浮かべる。「あらためましてイルカです!いや、大阪のみなさん、ケビン・コスナーです!!」と小ボケ増量気味にいつもの自己紹介をかますと、♪大阪で納めた年貢やさかい(堺)~とさらにたたみ掛けながら「年貢 for you」を早くも披露。ちょうどこの日、同じ大阪城内にある大阪城ホールでライヴを行っていたGLAYの楽曲や、「ナニワのリクエスト(涙のリクエスト)」なども織り交ぜ、容赦なく楽しませていく。
 日が暮れてあたりが少し暗くなってきたところで、念願の大阪城ライヴを開催できたことの感慨に耽る池ちゃん。「やっと叶った。ありがとう。泣きますよ、今日は」と感謝を込めながら、「LOVE弁慶」「SHIKIBU」と関西寄りなレキシソングを続けて演奏し、さらに「最後の将軍」ではキーボードソロで聴かせつつ、情感をたっぷり込めた歌声を城内に響き渡らせた。
 そして「大阪でもうひとつ忘れていけないものがある。一気に古墳に行きますよ~!」と「古墳へGO!」へ突入すると、例の〈K・O・F・U・N〉コールのタイミングでサプライズゲストとして、松井一郎大阪府知事が登場。すると池ちゃんは、百舌鳥・古市古墳群世界文化遺産登録応援大使のPR時に着用していたあの前方後円墳のかぶり物を府知事にかぶらせるという無茶振りをブッ込んだ!一瞬困惑したような表情を見せた知事も「盛り上がるなら何でもいい」と観念。世界文化遺産登録の実現への願いも込めて、古墳をかぶった知事も一緒に全員で〈K・O・F・U・N〉を歌い踊るという、二度とは見られないであろう貴重なワンシーンが繰り広げられた。それにしても池ちゃんの怖れを知らぬブッ込み力と、あらゆる人を巻き込んでいく人間力たるや……すごすぎる。


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 ここでバンド・メンバーが全員舞台を後にして、池ちゃんだけがステージに残った。すると、ステージには吉本新喜劇の看板女優・島田珠代が乱入!ハイテンションなボケを連発しながら池ちゃんに絡んでいくのだが、池ちゃん流のグルーヴによるツッコミがなかなか噛み合わなかったり、勢いが足りなかったり。すると珠代姉さんは「ツッコミがやさしい~、ストレスが溜まる!」「ツッコミに人間性が出てる」などと、舞台上でダメ出しをするように返しながら、それすらもさらなる笑いに変えていく。さすがベテランの芸人さんはすごいなぁーと感心していると、警官に扮したMr.オクレが登場。池ちゃんから「あれ、ハナレグミ?タカシ?」と振られると、オクレが♪キッチンにはハイライトと~とうろ覚えのメロディで「家族の風景」を歌って爆笑を誘う(ちなみに池ちゃんによると永積の実父にそっくりだという)。さらにはアフロのヅラをかぶった川畑泰史座長(池ちゃんにそっくり)とヒロイン宇都宮まき、ギターの名手・松浦真也など、新喜劇のスターたちが続々登場し、持ち前の名物ギャグを次々に連発していく。そして〈乳首ドリル〉で大人気の吉田裕が登場すると、池ちゃんがすっちー役になって「ドリルすんのかいせんのかい」の一連のくだりを完コピ!会場中から大きな笑いと歓声が上がった。ここまでの流れは、なんと小籔千豊による書き下ろしの脚本だったという。新喜劇ならではのちょっぴり人情味あふれるストーリーに、しっかりとオチを〈縄文土器、弥生土器~〉につなげて、そのまま「狩りから稲作へ」になだれ込む構成は見事であった。すると「狩りから稲作へ」の間奏で(すでに新喜劇メンバーは舞台を後にしているのに)元気出せ!遣唐使(渡和久)を相手に、先ほどやった〈乳首ドリル〉のくだりを「稲穂すんのかいせんのかい」とレキシ流にアレンジして再現。いつもレキシのライヴで、他のアーティストの楽曲にオリジナルな笑いのエッセンスを加えた〈替え歌〉を織り込んで、レキシならではのエンタテインメントに昇華していく光景を何度も見てきたが、それと同じことが新喜劇のギャグにおいても展開されていくとは!池ちゃんの嚙み砕き力と自分のスタイルに着こなしていくセンスに、あらためて舌を巻いた瞬間であった。

 あたりをすっかり包んだ夜の闇にライトアップされた大阪城が浮かび上がる中、「salt & stone」では、蹴鞠Chang(玉田豊夢)のドラムソロが長すぎることに激昂した池ちゃんがスティックを奪って投げとばし、頬にビンタ……するのではなく、やさしく抱きしめてやるというラフ&ピースな展開の時事ネタ茶番も挟みつつ、いよいよ本編ラストの楽曲へ。
 「こういう城の前や遺跡でライヴをやるためにライヴ活動をしてきた。なので、今がレキシのピークでございます!」とあふれる喜びを露わにして、城の前でやるならこの曲しかない!「ドゥ・ザ・キャッスル」を披露。♪基本的にただ好きな城の名前を叫んでいるだけ〜のこの曲で、1万3000人が「大阪城!」とシャウト。その上空には、♪今宵も月を見に行こう~という歌詞に応えるように、雲の隙間から綺麗な月が顔を出す。まさに430年前から大阪城を照らしていた〈あの日の月〉が、今宵この時も城をやさしく包み込んでいたのだった。
 アンコールの声に応えて、再びステージに登場した池ちゃんは、あらためて今回大阪城でのライヴが実現したこと喜びを振り返る。一年前から下見に来たりと、開催に漕ぎ着けるまで様々なハードルがあったようで「一時期はこの場所が使えなくなりそうにもなった。こんなにたくさんの人が来てくれて、本当にありがとう」と感謝を述べると、「スーパーバタードッグの頃から大阪はいつもあたたかく迎えてくれる。第二の故郷だと思ってます。俺はやっぱ、大阪好きやねん」と大阪の人たちへの愛を吐露して、最後は「きらきら武士」で大団円。歌い終えた御館様は、どこか感極まっていたようにも見えたが……サングラスの奥に涙があふれていたのかどうかは、空にきらめくたくさんの武士、そして今宵の月だけが知っている。

setlist,セットリスト M1. 真田記念日
M2. KATOKU
M3. KMTR645
M4. 年貢 for you
M5.LOVE弁慶
M6. SHIKIBU
M7. 最後の将軍
M8. 古墳へGO
M9. 狩りから稲作へ
M10. 刀狩りは突然に
M11. salt & stone
M12. ドゥ・ザ・キャッスル
EN. きらきら武士
member,バンドメンバー Gt:健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)
Piano&Cho:元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)
Ba:御恩と奉公と正人(鈴木正人 from LITTLE CREATURES)
Dr:蹴鞠Chang (玉田豊夢)
Sax & Flute: TAKE島流し (武嶋 聡)
Trumpet: 元妹子 (村上 基 from 在日ファンク)
guest,スペシャルゲスト 松井一郎大阪府知事

- 吉本新喜劇 -
川畑泰史 座長
島田珠代
Mr.オクレ
宇都宮まき
松浦真也
吉田裕

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