池田貴史の「ソロ」プロジェクト=レキシ。2007年のデビュー以来、日本史愛をこじらせた数々の名曲&名演を残してきた、そのレキシの歴史を彩る4枚目のアルバム誕生であります。
今回もおなじみ足軽先生こといとうせいこう、シャカッチことハナレグミを始め、持田香織(from Every Little Thing)、秦基博、二階堂和美、怒髪天、阿部芙蓉美、U-zhaan、さらにバックを固める腕っこきを含めた豪勢なメンバーがレキシネームで参加。
ポップでありながら奥深いような、笑えるようで泣けるような、聴く人の気をそらさない聴きどころ満載の全10曲。実にけっこうなお手前となった新作に対して「結果的にポップになりましたね」とはレキシ自身の弁。

「もっとアヴァンギャルドと言うか、マニアックなことしたいっていう気持ちもあったんですよ、自分の中では。でも、できあがってみたら前作『レキミ』の延長線上にあるアルバムになりました。デビューしたときは、レキシっていう存在自体が『今までにない壊れたもの』だったと思うんですけど(笑)、ライヴ重ねてきたら、そっちがもっと壊れたものになっちゃって(笑)、そこのバランスが取れてきたのかも」(レキシ=池田貴史)

ライヴの面白さが超弩級なのは、説明するまでもありませんが、今回のアルバムも、そのライヴ活動と併行して制作が進められております。

「『レキミ』が出たときから4枚目のことは考えていましたけど、本格化したのは去年7月のライヴ『BUSHI★ROCK FESTIVAL』の頃から。その時にスタッフがTwitterで『新曲やります!』って呟いちゃって(笑)、それで新曲(REKISHI★DISCO)を演ったあたりからですね。まあ、そのときの曲はアルバムに入ってないわけですけど(笑)」(レキシ)

その後、ツアーをはさんで重ねられたプリプロとレコーディング。そもそもレキシの豊潤なアイデアは、いったいどこから湧いてくるのでしょうか。

「いや、どうも軽く思われがちですけど、これが大変なんですから(笑)。歴史用語とか人名とか、普段から気になる言葉があると、それを歌ったサビとかワンコーラスぐらいはストックしてるんですよ。自分で言うのもナンですけど、いわゆる曲先(キョクセン)で曲を先に作ってメロディーが良すぎてもレキシにならないんですね。大事なのはキーワードになる言葉の響きとかリズム。それがピタッとくるのがまず大前提で、そこから先の面白さまで到達するのに時間がかかるんですよ。最初は全然自信がないんだけど、最後はやっぱり火事場の馬鹿力ってやつでして。自分で『ああ、バカだな〜』って思える曲になった瞬間が来るんですね(笑)」(レキシ)

大岡越前守ならぬ、アフロ守(越前生まれ)といった風情のアーティスト写真を見る限り、自信が無いとは到底思えないわけですが、そこはやはりレキシは一夜にして成らず。
その産みの苦しみを支えてくれているのは、バックのメンバーだとか。

「スタジオに入ってメンバーが音を出してから、メロディーや歌詞、構成を変えていくことも多いですね。ドラムのフィルひとつ、ベースのフレーズひとつで聴こえ方が変わってきますから。アレンジも含めて頼ってますね。やっぱりバンド出身なので、バンドっぽい作り方が性に合ってるみたいで」(レキシ)

そこにあるのは、誰が参加しようと、レキシネームをいただいた瞬間に、そのメンバーの中にもレキシ細胞が増殖してしまうという池田ユニットリーダーの研究成果。

「ファンク界におけるP-FUNKと同じで、メンバーが替わってもレキシはレキシ。でも、そのメンバーによって音も内容も変わっていくのが自分でも凄く面白い」(レキシ)

そのレキシ細胞を増殖させるのは、毎回期待が高まるフィーチャリング・アーティストも同じこと。

「もちろん参加してもらいたい人の構想はありましたけれど、その人向けに曲を作るということは、今回はあまりしていないんですね。でも、曲ができてみて、スタッフと相談したら『ああ、この人に歌ってもらったらピッタリ!』ってパズルのピースがどんどんはまっていった感じ。みんなレキシネームが欲しいらしくて(笑)、喜んで参加してくれてありがたいことです」(レキシ)

思い起こせば、世のご通家を唸らせたデビュー・アルバムは堂々のセルフタイトル『レキシ』(2007年)。
レキシの名を巷間に広めた2ndが『レキツ』(2011年)。
安定感のあるバカバカしさ(注:褒め言葉です)で、いわば城を築いた3rdアルバムが『レキミ』(2012年)。
カタカナの「シ・ツ・ミ」を書くときのちょっとした角度の違いを見事に遊んできて、4作目に選んだタイトルは『レシキ』。うっかり八兵衛級のうっかり屋さんが「え? レキシ? 1stアルバムと同じですか、ご隠居!?」と叫びそうなビミョーな遊びが、今回のレキシーランドの入り口。

「実はまた『レキシ』でもいいかと思ってたんですよ。だって、前作の『レキミ』を出したときのインタビューで一番多かった質問が『次はタイトルどうするんですか? 4だからレキシですか?』だったんですから、出たばかりのアルバムそっちのけで(笑)。その時は『そんな単純じゃない!』って言ってましたけど、そう言ってたくせに出てみたら『レキシ』だったら面白いかなって」(レキシ)

賢明なる皆さんはご想像の通り、同名タイトルのアルバムが2枚出るはずもなく、その案は却下。そこで編み出されたのが『レシキ』でありました。

「僕は、周りが沸くことがいつも大事だと思っているんですけど、『レシキ』っていうアイデアが一番スタッフに受けたんで、じゃあ、それでって」(レキシ)

ちなみに『レシキ』の「シキ」には、「ポップでカラフルな色という意味もあるし」とレキシ。

「しかも四季ともかかってくるでしょ。四季折々の日本の表情……って、それは完全に後付けです(笑)。後から考えましたって書いておいてください」(レキシ)

こうして4枚目のアルバムをリリース、そして、まさかの日本武道館公演を控えている現在の心境を最後に聞いてみることにしましょう。

「だいたいバンドでも4作目ぐらいで道に迷うことが多いじゃないですか(笑)。自分にとってはレキシは、そもそもライフワーク的なものなんですよね。だから、あんまり難しいこと考えずに、とにかくゆっくり長くやっていくことを大事にしたい。スーパーバタードッグの頃に『そこまでやったらバタードッグとしてはやり過ぎ』って言われてたようなことを、ひとりだから自分が楽しいように自由にやらせてもらっているわけで。バタードッグのライヴの中で最初にレキシを名乗ったその頃から思えば、よくぞここまでですよね。何かがおかしいんじゃないか(笑)。基本にあるのは自分が楽しめること。それが一番ですから。それを一緒に楽しめる人が楽しんでくれればいいなと思ってます。武道館に稲穂持って集まって(笑)。現在、でっかい埴輪を制作してますので、そこは乞うご期待です。あ、ライヴに来てくれた人はわかっていると思いますけど、レキシのライヴは『大事なところは他人の曲』ですから(笑)。親子連れとかいますよね? じゃ、アニソンやろうかな……ポニョ? コスプレしますか……って、そういうこと考えてるときが一番楽しい(笑)。ま、どういうことになるか、それも含めて楽しんでください」(レキシ)

text by 渡辺祐(エディター/ライター)

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