BUSHI★ROCK FESTIVAL

「ハナレグミ・So many tears のどこまでいくの180分」のライブにハナレグミ『あいのわ』の衣装で颯爽と現れ、「縄文土器が好きなら/弥生土器が好きなら」と、自分の土俵に引き寄せたコール&レスポンスを強要。アンコールでは手品も披露したSHIBUYA-AXのステージから2日後。お館様こと、レキシのおじちゃんこと、池田貴史は、レキシ史上最大のキャパとなるZepp Tokyoの舞台に立っていた。

 19時08分。戦国大名の行列のように駕篭に乗って入場したレキシの顔には、アーティスト写真でもお馴染みの富士山のペインティング。そして、ステージ後方には富士山の電飾。公演名は「BUSHI★ROCK FESTIVAL」である。"ふじ"ではなく"ぶし"。濁点を1つズラしたロックフェスは、「1曲目からさよなら言ってます」という「Goodbye ちょんまげ」からスタートした。ファルセットが胸の高鳴りを誘うディスコナンバー「大奥〜ラビリンス」のイントロでは、「改めまして、こんばんは。ケビン・コスナーです」とブレないあいさつ。レキシ、元気出せ!遣唐使(渡和久)、お台所さま(真城めぐみ)の3声によるハーモニーにうっとりしたのもつかの間、MCハマーや、アースウィンド&ファイアーの「セプテンバー」も飛び出す、一瞬足りとも耳を離せない展開。世間では、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が、「分かる人だけ分かればいい小ネタの多さ」で人気が高いが、"分かる人だけ分かればいい小ネタ"の多さでは、レキシもひけをとっていないだろう。

 頭上に手を乗せてマゲに見たてる"マゲ"のコール&レスポンスと、"大奥"の合唱を終えたところで、満員の会場を見渡し、「見て、この汗! びっくりする!! 人、来過ぎや!!!」とコメント。「ほんとに希有な人達」という流れから、希有'SからB'zで<♪夢じゃない>と「ultra soul」をシャウト。ここからはもう、思い付いたらやってみる小ネタの連続。バンドメンバーが演奏する「水戸黄門」のOPテーマ曲にあわせ、駕篭に乗って入場した足軽先生(いとうせいこう)との「恋に落ち武者」では、イントロを弾こうとする遣唐使の横で「キラキラ星」を歌って邪魔をし、サビの<どうする〜♪>のパートだけ、齋藤八津衛門(やついいちろう)がダッシュで登場。1フレーズだけ歌ってはステージを去るという演出に加え、スカビートに変化する直前には、安田祥子&由紀さおり姉妹「トルコ行進曲」もサンプリング。 
 続いて、ステージ上で気配を消してみせた「Let's 忍者」では、「風の谷のナウシカ」の名シーンを再現する一方で、赤毛ということで「モンゴメリー作」と紹介されたお台所さまとのデュエットによるソウルナンバー「君がいない幕府」では、鯖江弁の早口ラップと<♪さっき言ったセリフに意味はない>という美しいコーラスのシュールかつ有機的な絡み合いに、客席からは歓声があがった。

 駕篭には乗らず、担ぎ手として現れたのは、ほっかむり姿のマウス小僧jirokichi(堂島孝平)。レキシ初期の150人規模のライブを共にした彼は「レキシのおじちゃんを好きでいてくれてありがとう」と叫び、BLファンも胸キュンのポップチューン「妹子なぅ」をキラキラの笑顔でパフォーマンス。聖徳ふとこ(安藤裕子)は、赤い打掛を羽織って入場し、投げキッスのサービスをしたあと、「ほととぎす」で、ド迫力のヴォーカルを聞かせ、観客を一気に自分の世界に惹き込んだ。さらに、レキシと安全地帯「悲しみにさよなら」から、彼女のカバーアルバムで共演した「林檎殺人事件」をフリ付きで披露。「みんなの古墳を集めて、でっけー古墳玉を作ろう」というドラゴンボール風の呼びかけで歌い出した「古墳へGO!」では、おなじみの「K、O、F、ためて〜UN!!」(元ネタは海援隊の「JODAN JODAN」)から全力の「YMCA」に移行し、最後は「コラっ! どんどんDVD化できなくなるわ!!」とノリツッコミ。

   ここで、「いよいよ本日、最後のゲストを呼びますか。最後のゲスト、略して"サイゲス"の極み!」という紹介で、「ガチの日本史好き」だというMC母上(Mummy-D)が男の色気漂う着物姿で入場。「そもそもレキシネームを気に入ってないからね。あと、あんまり歴史をもてあそんで欲しくない」と不満を口にしながらも、「織田信長が中世を終わらせた」という持論を話し出した途端に演奏が始まり、「かくれキリシタンゴ」に突入。しかし、譜面台の前に膝をついて、歌詞を思い切り見ながら歌ったことに、お館様が不満を示し、再チャレンジを要求。MC母上は、突然のリクエストに戸惑いを見せながらも、すくっと立ち上がって、歌詞を全く見ずに歌い切り、観客からの大歓声を浴びた。
 本編の最後は「きらきら武士」。「貴族の風景」(ハナレグミ「家族の風景」の替え歌)や、「甘えん坊将軍」に「上を向いて歩こう」、松山千春やアドちゃんもフィーチャーしながらも、観客全員で<♪BUSHI IN THE SKY>の大合唱をし、レキシもサングラスが吹っ飛ぶほどの熱いキーボードソロを見せ、21時05分に大団円を迎えた。たった10曲と言えども、「本編をちゃんと2時間でまとめるなんて、レキシも成長したな〜」と感じたはず人も多いはず。

 アンコールではお館様のメイク落としを待つ間、遣唐使が「ハニワニワ」を朗読するという羞恥プレイを楽しんだあと、富士山のかぶり物をしたレキシが再登場。ここで、改めて、「思い起こせば、とっても出たいフェスに断れまして。断れた理由が、『コミカル過ぎる』と。僕は思ったんです。本望です!」と"FUJI"ではなく"BUSHI"に込めた思いを語り、まだ未完成だと言う新曲「REKISI DISCO」を初披露。歌謡ディスコ調のナンバーを完璧に演奏したメンバーに対し「奇跡だね。メンバーひとりひとりをベロベロなめたいくらい感動した!(最後は小泉元首相)」というレキシは、続いて「ゲストも出そろって、緊張の糸が切れております。ここからは家状態です。家よりゆるいかもしれませんよ」と前置きした上で、全ゲストを呼び込むが、なかなか曲が進まない。MC母上に「竹中(直人)さんの次に絡み辛い」と言われると、「そっちの方がすげー!」と、懐かしの「東京イエローページ」ネタを放り込むも会場は無反応。ケチャ、ドリフのヒゲダンス、SECOMしてますか?、剛力彩芽に由利徹「岸壁の母」を経て、ようやくいつもの高床式の流れに。最後は<♪どっちが好き〜>のコーラスから<♪もうしおどき〜>とアカペラで歌い、22分に及んだ「狩りから稲作へ」は終了した。

 最後に、レキシは次のワンマンライブについて語り、「また遊びにきてね」と呼びかけて、ステージをあとにした。また、終演後の彼は、「内蔵が痛くなった」ともつぶやいていた。好き勝手に暴れているように見えて、本当はゲストの多さやキャパの大きさに不安や緊張も感じていたのだろう。この日のライブ中、レキシは何度も「後ろの人には伝わらないって。新代田FEVERでやったほうがいい」と吐露していた。「なにしにきたの? 早く帰れ(笑)」と、客席を罵倒する、おなじみのやり取りがなかったのも、会場が大きくなればなるほど、冗談や真意が正しく伝わらないかもしれないという配慮があったからだろう。レキシの人気が増し、キャパが拡大するにつれて、観客に伝えたいという思いは増しているのではないかと感じた180分であった。