レキシツアー もう一度遺跡について考えてみよう〜大きなハニワの下で〜


田安門へと続く道は、まるで参勤交代で将軍のもとに出仕する大名行列のように、袴Tに身を包んだたくさんの武士・武士・武士──いよいよ訪れた「8・20(ハニワの日)」。大きな玉ねぎの下に集ったレキ男・レキ女たちの笑顔と興奮で、武道館周辺は異様なエネルギーに満ちていた。

 大きな期待を胸に城内に、もとい、場内に入ると目の前に広がるのは武家屋敷、赤い太鼓橋、高く積まれた米俵……といった江戸の街を凝縮したようなステージセット。その佇まいは、武道館のコンサートというよりも、大物演歌歌手が行う明治座の座長公演のようだ。そんな江戸チックなセットの両端にドドンと屹立するのが、2体の巨大なハニワ。「江戸にハニワ?」という違和感も無いわけではないが、そんなクエスチョンマークも豪快に吹き飛ばすほどに、ハニワはデカい。無駄にデカい。よく見ると、上手と下手で表情が違うというか、作り方が違う?そんな風にハニワへの思いをめぐらせているうちに、客電が落ちる。ホラ貝のようなBGMが流れると、巨大ハニワの目が赤く光りはじめた。もしや、ハニワから大魔神に変身か? と思ったが、そんなことはなく、バンド・メンバーがステージに登場。今回は、ギター:健介さん格さん、ピアノ&コーラス:元気出せ!遣唐使、ベース:ヒロ出島、ドラム:蹴鞠Changという鉄壁の四天王に加え、パーカッション:となりのトロ遺跡、コーラス:お台所さま、ホーンセクション:レキシ仮名手ホーンズという、豪華な布陣が揃った。そしていよいよ御館様(池田貴史)の登場か、というところで、舞台の上に下ろされたスクリーンから流れてきたのは、「マルちゃん 麺づくり」のCM! 意外な展開に爆笑するオーディエンスを畳み掛けるように、河原を苦しそうに走るレシキ公式キャラクター〈TAWARAちゃん〉のマラソン中継が映し出される。併走するアフロのランナー二人に励まされながら、武道館へと向かうTAWARAちゃん。いつしかBGMは、やついいちろう(エレキコミック)が歌う、「負けないで」に変わっていた。

 そんなマラソン中継の映像が終わると、ステージ中央の武家屋敷の障子が開き、いよいよ御館様ことレキシ池田貴史が登場!「はじまっちゃったよ~!」という叫びとともに「大奥~ラビリンス~」で記念すべき武道館ワンマンはスタート。だが、曲が終盤に差し掛かると、なぜか伴奏は「負けないで」に。それにつられて池ちゃんもZARDよろしく歌いはじめると、会場中も大合唱。そんな歌声に背中を押されて、TAWARAちゃんが長いマラソンを走り抜け感動のゴール! あの地球救っちゃう方のマラソンよりも1週間ほど早く名シーンを目の当たりにして盛り上がる客席に向かって「(「大奥~ラビリンス~」よりも)こっちが盛り上がるってどういうことや!」と一喝。御館様は少々おむずかりのご様子? 続くロックンロール・チューン「姫君Shake!」でギアを上げて、軽快にドライブする「RUN 飛脚 RUN」では、ツアーで恒例となった飛脚BOXによるボールキャッチも、客席と丁々発止のやりとりをしながらなんとか成功。すでにこのでっかい武道館を、居心地のいい「自分の部屋」で遊んでいるかのように自由自在に制しているあたり、さすが御館様の度量のデカさと言えよう。

 「あらためまして、ケビン・コスナーです」と、いつもの挨拶に続けて披露したのは、ディスコ・ナンバー「ドゥ・ザ・キャッスル」。城をかたどった被り物で歌い踊るこの曲で、かつて江戸城があった場所は、時空を超えて巨大なディスコティークへと変貌した。そして、ここで最初のゲスト、シャカッチが登場!忍者という設定からはかけ離れたド派手な衣装に身を包んで、少し懐かしいナンバーである「ペリーダンシング」を演奏。合間にシャカッチのギターと池ちゃんのキーボードとの応酬が入り、そのままSUPER BUTTER DOG時代の人気曲「FUNKYウーロン茶」になだれ込むという、古くからのファンに取っては嬉しいメドレーも聴かせてくれた。引き続きシャカッチとともに披露したミッド・ファンク「憲法セブンティーン」では、間奏に入ると真ん中に立つ池ちゃんに向かって、メンバーそれぞれが楽器の音色のみで語りかけるようなフレーズをプレイ。同時に話されて困惑する池ちゃん。まさに歌詞にある〈聖徳太子じゃあるまいし〉を再現した、伝わりづらい迷シーンであった。シャカッチがステージを去り、7曲目には「妹子なぅ」を披露。〈Don't look back 飛鳥〉と後ろを振り返らないポジティヴな曲の後だったが、さすがに折り返し地点で疲労困憊したのか「2年ぐらい休憩したい」とMCにはボヤキも。しかし、「あらためまして、クリス・ハートです」と自己紹介し直して(自分の名前でもなんでもないが)、ペットボトルの水を(ただの水だが)グイッと一気飲みして後半戦へ突入! 

 2組目のゲストとして登場したのは、尼ンダこと二階堂和美! 身に纏っていた美しい法衣は、僧侶としても活動するニカさん自前のもの。そんな徳をさずかりそうな衣装を前にして、レキシのメンバーも普段着じゃダメだと〈正装〉である犬の被り物を装着し、ジャジーに「お犬様」がスタート。今回の武道館公演には〈親子席〉も設けられた。そこで池ちゃんとニカさんが歌のおにいさん・おねえさんになって、親子席に向けて子ども向けの歌を次々に歌っていく。「犬のおまわりさん」から「ゲラゲラポー」、果ては「スーダラ節」まで飛び出したが、最後にニカさんが主題歌を担当した『かぐや姫の物語』の「いのちの記憶」をアカペラで歌いだすと、バンドのメンバーもすっと伴奏を合わせていく。嬉しいハプニングであり、レキシを支えるバンドの対応力に感心しまくりの瞬間であった(あとから訊いたところ、「いのちの記憶」についてはリハも一度もやっていない、完全にぶっつけ本番だったとのこと)。拍手喝采を浴びながら尼ンダがステージを後にすると、池ちゃんはすっとキーボードのほうに向かい、元気出せ!遣唐使の肩を抱いて「やっと二人きりになれたね♡」と、最近ではお馴染みの池田と渡のイチャイチャTIMEへ。有名な曲のフレーズやタイトルの〈数〉を少しずつ変えていく〈メイベリン〉ネタなど、見てない人には何がなんやらわからないだろうが、とにかく爆笑の連続だったピアノ弾き語りギャグ(あえてギャグと呼ぶ)から、池ちゃんと渡くんの美しいハーモニーが映える名バラード「墾田永年私財法」へ。さっきまで笑いの渦に巻き込まれていた武道館が、ここで一気に感動に包まれる。そして、壮大なる忘れ物ソング「僕の印籠知りませんか?」ではシリアスな表情も。2曲続くバラードをじっくりと聴かせ、レキシと、彼を支えるバンド・メンバーの表現力の幅広さを見せつけた。続いて披露されたのは、さわやかに疾走するソウル・ナンバー「古墳へGO!」。レキシ仮名手ホーンズのTAKE島流しが流麗なサックス・ソロを聴かせ、〈K・O・F・UN〉コールでは、往年の海援隊「JODAN JODAN」を彷彿とさせる無理のある振り付けを、1万人以上のオーディエンスが一斉に踊るという、バカバカしくも美しい光景が見られた。