レキシ 対 オシャレキシ 〜お洒落になっちゃう冬の乱〜

話をライヴ本編に戻そう。すっかりオシャレキシの魅力に染まってしまった元気出せ!遣唐使が、“I♡ オシャレキシ”Tシャツを着て謀反を起こす、という、ちょっと伝わりづらかった寸劇 (?)からの、アヴァンギャルド・ジャズを彷彿とさせるサウンドに、元気出せ!遣唐使への熱い想いを歌にのせた「君のいない幕府」、そして健介さん格さんのガットギターからはじまるボッサ~ブラジリアン・ファンクに姿を変えた「きらきら武士」と、オシャレキシが手がけるアレンジの数々に予想は鮮やかに裏切られ、フロアは驚きと感嘆がごちゃ混ぜになったような、今までのレキシのステージとはまったく違う感動に包まれていた。「名古屋・大阪と回ってきたけど、あなた最後にいろいろやりすぎ!こないだより長く弾いてるし!」と、ツアー最終日にかける想いがほとばしって仕方ない上原の演奏に驚愕する池ちゃん。すっかりオシャレキシのペースに飲まれたカタチになってしまっていたが、やっぱり初心を忘れてはいけない!と、あらためて「きらきら武士」をオリジナルのアレンジで演奏。そのまま「年貢 for you」をいつものアレンジで歌いはじめると、オシャレキシは寂しそうにステージを後にする。

しかし、曲が終わろうとする頃に、またもやステージ下手から怪しい人影が……。レキシのみんなが楽しそうに演奏しているのを、オシャレキシが電柱 (のイラストがかかれた板)の陰に隠れて覗き見していたのだ!という設定の小芝居で登場した上原に、「さびしかったの?」と優しく迎える池ちゃん。一緒に演奏したいなら「もうオシャレにしないって約束する?」と念を押して、ここからは貴史とひろみのイチャイチャTIMEに突入。二人だけになったステージで、ピアノ伴奏のみで演奏されるのは「ハニワニワ」。ここは今までペースに飲まれっぱなしだったのを反撃するタイミング!と、池ちゃんが自由すぎる即興で、「トルコ行進曲」「枯葉」「恋人よ」「魔王」……などなど、クラシックからポップスまで次々と関係ないフレーズをブッ込んでいく。しかし、池ちゃんが自由にブッ込めばブッ込むほど、それに応える上原のテンションは上がっていく。嬉しそうにピアノを弾く光景に、池ちゃんも舌を巻き、「もう好きにやっていいよ!あなたは自由だ!」と認め、そこからはレキシとオシャレキシが完全合体した、ネクスト・ステージへと突入していく。

再びレキシのメンバーと黒船ホーンズを迎え入れ、7曲目の「salt & stone」を披露。原曲の力強さはそのままに、サンバ調のアレンジにヴァージョン・アップさせる。そして、この日一番の驚きだったのは、8曲目に演奏された「憲法セブンティーン」。”憲法十七条”だから十七拍子にしてみたという思いつきから、変拍子バリバリの驚愕のアレンジを上げてきた上原のセンスもすごいが、それにガッツリと対応するレキシ・メンバーのミュージシャンシップに感服させられた面だった。曲間には、歌詞にあわせて”いっぺんに演奏されてもわからないクイズ”と題して、メンバー一人一人が別々の曲をいっぺんに演奏するという無茶なパートも織り交ぜられ、もっともカオティックなナンバーへとメタモルフォーゼしていたのが痛快であった。

そして、いよいよ伝説的な夜も終盤に。本編ラストの曲としてオシャレキシが選んだのは、レキシのライヴでも一度も演奏されることがなかったという、ファーストアルバム収録の「和睦」。この選曲に池ちゃんは、「レキシのテーマはラブ&ピースならぬ”ラフ&ピース”。この曲を選んでくれてありがとう、オシャレキシ!」と、まさにタイトル通りレキシとオシャレキシは”和睦”した。年の瀬ムードにぴったり合う、スウィング調のゴージャスなアレンジで演奏されたこの曲では、池ちゃんがマジックを披露するという、一足早く”かくし芸”タイムも織り交ぜられたりと、気付けば決戦の場は、まさにラフ&ピースの精神に満ちあふれた至福の空間と化していた。

鳴り止まない拍手の中、アンコールに応えてふたたび登場したレキシとオシャレキシ。またもファーストアルバムから「LOVEレキシ」を演奏。今回ツアーで披露された楽曲は、ほぼすべて上原ひろみが選曲し、2013年秋頃から、上原自身の手によって少しずつアレンジされていったという。後日談だが、池ちゃんやメンバーも、原曲から大きく変貌したアレンジが上原から送られてくる度に「こんなの再現するの無理だろう」と驚いていたという。そして2014年の夏 (レキシの武道館公演が行われる前)に初のリハーサルに入り、その後数回に渡り、リハーサルを重ねて今回のツアーに臨んだ。池ちゃんも上原も、さらにはバンドのメンバーも皆、過密スケジュールの中で、こんなにも実験的で、しかもこれほどまでにエンタテインメント精神に満ちたステージで魅了してくれるとは。この日ステージに立っていたミュージシャンたちの、とんでもなく優れたセンスとスキルには、とにかく脱帽だ。

3時間に及んだ夢のようなコラボレーションもいよいよエンディング。しかし、池ちゃんは今日ひとつだけ悔いが残ることがあると言う。「それは、1曲目が中途半端に終わっちゃったこと!”キャッツ”もやってない!」と、オシャレキシの乱入で最後まで完奏できなかった「狩りから稲作へ」を、1曲目の途中から披露された”オシャレver.”で演奏した。今回、上原ひろみが手がけたアレンジのすべてには、レキシが作ってきた楽曲への愛情やリスペクトの深さが随所にあふれていたし、自由奔放な遊び心が手加減なしに織り交ぜられていた。それは、池ちゃんはじめ、今回参加したミュージシャンたちに対する厚い信頼があってこそなのだろう──最終日のオーラスである「狩りから稲作へ」を演奏する彼らの、充実しきった表情を観ながら、そんな想いを巡らせていた。

そういえば、1曲目の「狩りから稲作へ」では出来なかった稲穂コールや高床式コールをオーディエンスと一緒に叶えた池ちゃんは、続いて ♪レキシとオシャレキシどっちが好き~ と歌った。会場中のほとんどの人が「どっちも好き!」と叫ぼうとしている中、池ちゃんはいつも通り ♪どっちも土器~ と歌っていた。「そこ、土器かよ!」と心の中でツッコミつつ、そんなスカし具合こそがレキシだよなぁとニヤリとしてみたり──なんだかんだ言って我々は、結局レキシの手の平の上で踊らされているだけなのかもしれない。